社会保険料の仕組み ~サラリーマン編~
保険の皮を被った税金、社会保険料の仕組みを学びます。本記事は個人が趣味で調べた情報の備忘録であり、数値その他情報の正確性は保証致しかねます。
サラリーマン編と銘打っていますが、これ以外の編の作成予定はありません。
まずは単純化のためにモデルを設定します。
年収600万円前後(正確には594万円)になるよう調整しています。年齢はテキトーです。
では、このAさんの社会保険料は一体いくらになるのか見ていきます。
社会保険料とは
会社員の場合、社会保険料とは通常、下記の5種類の保険料のことを指します。
「①健康保険料」「②介護保険料」「③厚生年金保険料」は従業員と会社が折半して負担する保険料です。
「④雇用保険料」はざっくりですが、従業員1に対して会社2程度の割合で負担する保険料です。
「⑤労災保険料」は、会社が全額負担する保険料です。(Aさんは負担無し)
また、「②介護保険料」は、健康保険に加入している40歳以上、65歳未満の方が加入・負担する保険料となります。(Aさんは対象外)
そのため、Aさんの場合、給料から天引きされるのは、
- 「①健康保険料」
- 「③厚生年金保険料」
- 「④雇用保険料」
以上3つの保険料となります。それぞれについて見ていきましょう。
雇用保険料について
「雇用保険料」の計算は単純で、以下の式より毎月の雇用保険料が求められます。
「賃金総額」とは毎月貰う賃金の総額を指し、賃金に加え、深夜手当などの各種手当が諸々含まれた額です。
「雇用保険料率」は以下の雇用保険料率表から求めます。
例えば、Aさんは一般の事業の労働者となるため、雇用保険料率は4/1000(0.4%)となります。(平成28年度)
(引用元:雇用保険料率について |厚生労働省)
健康保険料、厚生年金保険料について
「健康保険料」「厚生年金保険料」は、標準報酬月額により保険料額がそれぞれいくらになるか決まります。標準報酬月額が低いほど保険料額は低く、標準報酬月額が高いほど保険料額が高くなります。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、保険料額の算定の基準となる報酬(月給)のことです。
毎年1回、4月・5月・6月の報酬の平均値を用いて決定されます。7月に決定した標準報酬月額は、1年間(9月~翌年8月まで)固定され、基本的には変動しません。
報酬には、賃金・各種手当て・通勤手当てなど労務の対償として受け取るものすべてが含まれます。
保険料額を計算してみよう
健康保険料と厚生年金保険料の保険料額は、以下の保険料額表から求めることができます。
例えば、Aさんの場合、報酬の平均値は33万円となり(今回のモデルでは月給が変動しないため)、保険料額表の330,000円以上~350,000円未満の範囲に該当します。
標準報酬月額は340,000円となるため、24(20)等級の行を参照します。
(引用元:平成28年度保険料額表 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会)
(*都道府県によって料率が若干変わります。ここでは東京都の表を引用しています)
また、雇用保険料は「賃金総額×0.4%」で求められるので、各保険料額はそれぞれ以下のようになります。
よって、計48,560円が毎月の給与から無慈悲に天引きされることになります。
賞与(ボーナス)に係る保険料額を計算してみよう
保険料額表には賞与(ボーナス)の欄がありませんが、実際にはもちろん天引きされます。
あの天引き額はどのように算出されるのでしょうか?
実は賞与の保険料額も、保険料額表から求めることができます。
保険料額表の下部を見ると次のような但し書きがあります。
賞与に係る保険料額は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額(標準賞与額)に、保険料率を乗じた額となります。
ここから、賞与に係る健康保険料と厚生年金保険料は以下の式より求められます。
「標準賞与額」は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額です。
「保険料率」は、保険料額表より、健康保険料率「9.96%」厚生年金保険料率「17.828%」となります。
(引用元:同上)
例えば、賞与の基準月数が6ヶ月(3ヶ月×2回支給)のAさんの場合、標準賞与額は「99万円(33万円*3ヶ月分)」となり、各保険料額はそれぞれ以下のようになります。(雇用保険料の計算方法は変わりません)
よって、賞与からは計141,513円が無慈悲に天引きされます。
悲しいですね。
まとめ
社会保険料の大まかな仕組みを学ぶことができました。
Aさんのケースでは、年収5,940,000円に対し、社会保険料は総額865,746円となり、対年収比で約15%の負担となります。
しかし、これで終わりではありません。ここからさらに税金が天引きされます。
哀れなことに、サラリーマンは天引きされる生き物なのです。
おとなしく年金受給開始年齢になるまで年金制度が破綻せずに存続するよう祈りましょう。
おわり